メイドさん大王

接近!レッドマンホワイト!


お爺様が死んだと最初に聞かされたとき、とりあえず僕は呆然とした。

普通の人間がしなくてはならない反応を辿るかのごとく、棒立ちになり、葬式に時には少し泣いた。

しかしその時にも、まだ僕はお爺様と、一緒に死んだ心音のお父さんの死を受け入れられていなかったように思う。

心音は最初の時こそひどく取り乱したが、次の日からは腫らした目で雑務に当たるようになった。

彼女がいつも伸ばしていた背筋は、その時から余計にそらされるようになった。

そしてそれを見ると、僕は実際に涙を流したときよりも悲しい気持ちになった。

「ねぇ、心音」

家がなくなって、心音と二人で暮らすことになったとき、僕は聞いた。

何度もいった言葉だから、なるべく儀礼的にならないように。

「何でしょう、平助様」

心音は、なんだか僕の次の言葉を察しているみたいだ。

「何度も言った事だけど、改めて、真剣に聞いて欲しいんだ」

真面目に聞いてもらうためにも、僕は畳の上で正座になり、心音が聞いてくれる体勢を待った。

まぁ、心音はいつだって真面目なんだけど。

すると心音はそれも察してくれたらしく、メイド服のスカートの裾を押さえながら、同じく正座をする。

「はい」

「ほんっとうに他のところに就職する気はないの?」

言われた途端、心音の眉間に皺がよる。

何度もされた質問に、うんざりした顔をこらえたのか、ため息をこらえたのか。

もしくは何度も聞く僕を怒っているかもしれないし、それが悲しいのかもしれない。

いや考えるのはやめよう。

とりあえずこの質問で心音の心象が良くなる筈ないんだ。

「ありません」

心音の答えは簡潔。

やっぱり、少し怒ってるのかもしれない。

でも。

「本当によく考えた? 義理だとか、伝統だとか、そういうのならもう無いんだよ。 あれはもうなくなちゃったんだよ」

これから僕達は、家を出るときにもらった少ないお金を切り崩しながら生活することになっていた。

と、いうより、そういう生活をするはずだった僕に、心音がついてきた訳だ。

彼女ほど有能なら、他にいくらでも仕事があるにもかかわらず。

そうしてくれた彼女の行動を考えれば、確かにこの問答は野暮の極みかもしれない。

でも、だ。

「高月家は、まだなくなってなどいません」

心音は頑なに言う。 繰り返す。

僕は首を振る。

これが理由だって言うなら、僕は譲れないのだ。

「無いよ。 無いんだって。 あの家はもう他人のものなんだ。 高月なんて苗字には何の価値も無いし、僕に至ってはただの子供。 凄かったお爺様はもういない。 心也さんだって…」 

言っていて、途中でそれが自分の愚痴になっていたことに気づく。

そして、心也さんの、心音のお父さんの名前を出す必要なんて無かったことにも。

そうだよ。 心音だって泣いてたんだ。

それなのに僕はなんて迂闊な…。

慌てて心音の顔を見る。

ポフッ。

と、心音の顔を見る前に視界が急に覆われた。

ていうか柔らか…。

「こ、心音!?」

心音が、僕の頭を抱いているのだ。

その…、胸で。

間近で発した僕の息がくすぐったかったのか、心音は軽く身じろぎしてから、僕の頭を横にして抱え直した。

「大丈夫です、平助様」

何が、とも言わずに、心音が腕の力を強める。

僕は余計、心音にうずまる。

「平助様は、大旦那様の跡を継ぐに相応しい、立派で優しいお方です」

子守唄を聞かせるみたいに、あくまで優しく。

でも、腕の力はそのままに。

「確かにもう、大旦那様はいません。 父も、いません」

心音の語尾が、震える。

彼女は呼吸を整えるためか、一旦間を空けた。

「大丈夫です。 わたしは、平助様のお側を離れたりはいたしません。 平助様の望む限り」

離してくれともいえないまま、結局僕は心音に体をあずけた。

不快感のないまどろみの中、彼女の言葉について考える。

僕は多分、心音の言うとおり不安だ。

何回も同じ問いをしたのだって、心音にこう答えて欲しかっただけなのかもしれない。

でも多分それは違う。

僕が不安になったのは、彼女の言葉を聞いて、彼女の温もりに触れて、それからだ。

彼女に触れていると、嫌でも自分の背中や置き場のない手の冷たさに気付いてしまう。

今の僕には、確かに心音しかいないんだ。

このとき初めて、僕はお爺様や心也さんの死を受け入れたのかもしれない。

「心音…」

まるで寝起きのような、間抜けでかすれた声が出る。

「はい」

「ありがとう」

「…はい」

欠伸のような涙が、目の端から流れ落ちる。

そしてそれが、心音の服に染み込んだ。

だから、もう僕は心音がいないと生きていけないかもしれない。

でも…。

その日の夜、僕は心音に書置きを残して、家から逃げ出した…。

 

 

浸っていた回想から、意識を現在に戻す。

何でこんなことを思い出したかって言うと。

「確かに、ポフッだったかも…」

ふと、この前の銭湯でもパララ君とのやり取りを思い出したから。

その、心音の胸の感触について。

いや、いやらしい意味じゃなくて、当時の思い出も付随させた割と重い回想なんだけど。

あの時は、そんな気持ち微塵もなかったし。

「…何にやけた顔してんのよ」

「って、いや、うわ! 別にあの時って言うのは別に今は違うってことじゃなくて!」

真横でいきなり声がして、僕は思わず訳の分からないことをまくし立てる。

声の主は朱色のスーツに黒いはねっ毛。 翔子ちゃんだった。

珍しく戦う相手がいないらしい。

僕はといえば適当な相手もいないし戦う気も起こらなくて、例のごとくここでサボってたんだけど。

「戦闘中にやらしいこと考えるなんて良いご身分じゃない」

凄みがある笑みを浮かべながら僕に詰め寄る翔子ちゃん。

まずい…。

「だ、だから、別にあれはいやらしいことじゃなくて。 ちょ、翔子ちゃん聞いてる!?」

「うるさい!」

翔子ちゃんのこぶしが振り上げられ、僕は無駄と分かっていながら両手で頭を覆った。

早くも戦線離脱かと、僕が覚悟を決めた瞬間だった。

「仲がよろしいのは結構なんですが」

翔子ちゃんの後ろから声が響く。

僕らは二人して、そのままの姿勢でそちらを振り向いた。

こっちは桃色のスーツ。 ヘルメットは被ったまま。

まぁ、色で分かる、百瀬さんだ。

「今は少々忙しいので、また後にしていただけないでしょうか」

ヘルメットの中ではふわりと笑みを浮かべたであろう百瀬さんが、翔子ちゃんをやさしく止める。

「ちっ!」

舌打ちをして、翔子ちゃんが振り下ろすはずのこぶしを収めた。

た、助かった。

「命拾いしたわね」

捨て台詞をはき、二歩三歩。

「…」

「あと、別に仲が良い訳じゃないんだからね!!」

今度こそ本当の捨て台詞だ。

翔子ちゃんは叫んだ後、ヘルメットを装着して再度戦場へ向かう。

そしてすぐ、彼女は砂煙と黒い戦闘員の集団に紛れて見えなくなった。

「翔子さん。 平助さんと話すためにわざわざメットを脱いだんですよ。 可愛いですよね」

「え、あ、はぁ…」

どう答えたら良いか分からず、僕は煮え切らない返事を返した。

 

 

少し離れた場所では、健ちゃんが真面目に戦っていた。

「ふッ」

短い呼気とともに健ちゃんの拳が繰り出される。

戦闘員なら一撃で昏倒するその拳を、相手は簡単に払いのけた。

「ガウルアァァァ!!」

獣のごとき咆哮が響き渡る。

というより獣なんだけど…。

銀の体毛にファンタジーのような鎧。

今回はバウバウさんが出撃しているのだ。

「うげっ」

覆いかぶさるように迫るバウバウさんの顎。

健ちゃんは彼の脇の下から素早く抜け出すと、同時にその肘にもう一度正拳を叩き込んだ。

「ぬぐぅ!」

俗な表現で申し訳ないけど、あのぶつけるとやたら痛い箇所だ。

さすがにバウバウさんもひるむ。

「よっしゃ!」

好機と見て、健ちゃんが畳み込むように反対の腕で連撃。

しかし。

「舐めるな!」

空いた手を使ったのはバウバウさんも一緒だった。

鋭い爪を有したその手が、健ちゃんの側頭部を襲う。

ガキィン!

硬質な音を立てて、健ちゃんが頭から吹っ飛んだ。

「健ちゃん!」

僕は思わず声を上げる。

敵を心配した所為でバウバウさんに睨まれたけど、それより健ちゃんだ。

怪人の力がどのくらいかなんて分からないけど、今みたいな飛び方をすれば僕だったらひとたまりも無い。

健ちゃんの体が冗談のように地面を滑る。

僕は駆け出すかどうか迷い、僕は百瀬さんをみた。

「はい、どうかしました?」

「え、いや、どうかしたもなにも…」

彼女は平然としている。

いや、彼女の場合ヘルメットを脱いでないし、どんな顔をしているかなんて分からないんだけど。

立ち姿からは狼狽など微塵も感じられない。

というか、顔をヘルメットで覆った全体的にピンク色の人が、良家のお嬢様のような立ち方をしているこの図のシュールさ。

順序が逆だけど、場を考えればつっこむべきは彼女の姿より態度だ。

「健ちゃん、あんなに吹っ飛んだんだけど…」

「そうですね。 怪人さんの力は健太郎さんより強いようです」

「そういう分析でもなくて! 健ちゃんが吹っ飛んだんだよ!?」

あくまでも朗らかさを保つ彼女に対して耐え切れなくなり、僕は思わず声を荒げた。

「それが、どうかしましたか?」

苛立った僕を見て、なぜだか百瀬さんは何故だかヘルメットの中からくすくすと笑い声を漏らした。

何でこのタイミングで笑うんだ。

彼女の挙動に僕は不気味なものを感じてしまう。

笑い声が外に漏れているだけで、本当は中の彼女は笑っていないのではないか。

そちらの方が余程納得がいく。

「ふふっ、そんなに心配しなくても平気ですよ。 彼なら、ほら」

百瀬さんが健ちゃんのほうを手で示す。

つられて見ると、健ちゃんは上半身を起こし、うたれた頭をさすっていた。

「がぁ〜! やっば、痛い! っていうか反則!!」

何か叫んでいるが、とりあえず無事なようだ。

考えてみれば翔子ちゃんだって、バズーカをくらってもグレネードをくらっても平気だったのだ。

いくら怪人さんの一撃とは言え、生死にかかわることは無いだろう。

でも、翔子ちゃんの時はこんなことなんて考えなかったなぁ。

まぁ、多分中身が翔子ちゃんだっ所為だろうけど。

僕はまた百瀬さんの方を振り向く。

彼女は、これが分かっていたからあんな風に笑ったのだろうか。

…何故だか素直にそう考えられない自分がいる。

一瞬でも彼女に恐怖を覚えた自分に恥ずかしさを覚えた所為かな。

そうだ、多分そうだ…。

「少しお話でもしましょうか、平助さん」

「え、あぁ…と」

彼女にそう言われて、僕はひどく狼狽した。

意味も無く周りを見回す。

「わたしと二人だけは、お嫌ですか?」

ヘルメットを載せた首を傾げて、百瀬さんが問う。

「そうじゃなくて…と、健ちゃんに加勢とかしないで良いの?」

健ちゃんはいまだにバウバウさんと戦闘を繰り広げている。

そして、やっぱり劣勢だ。

まぁ、これはひどく後付なセリフなんだけど、その僕から見ても納得のできる理由に思えた。

大体彼女だって、さっきは翔子ちゃんに忙しいとか言ってたのに…。

「それでしたら問題はありませんよ」

ぱんっ。 と手を打って百瀬さんが明るく答える。

だから、ヘルメットをつけたままそういう仕草をしないで欲しいんだけど…。

と、再び健ちゃんが派手に吹っ飛ばされた。

さっきより短い時間で起き上がる。

「あー、もう! 誰か加勢頼むって!」

「ほら、ああ言って…」

タイミングよく発せられた健ちゃんの言葉に、僕は再び百瀬さんを説得にかかる。

自分でも何故こんなに必死なのか分からないまま。

だが。

「わぁってるわよ!!」

百瀬さんが何か言う前に、混戦している土煙の中から、朱色の影が躍り出た。

翔子ちゃんだ。

彼女は追いすがる戦闘員をなぎ払い、一直線に健ちゃんたちのほうへ走る。

どうやらまたしても、戦闘員による人海戦術の餌食になっていたらしい。

「…なんか最近人気者だね、翔子ちゃん」

「えぇ、そうですね」

何か、百瀬さんの役を押し付けられているようだ。

もしかしたら僕の同僚達は急に翔子ちゃんの魅力に気付いたのかもしれない。

…無いか。

「平助! 後で殺す!」

僕の思考に気付いたかのように、翔子ちゃんが怒声を上げる。

なんでばれたんだ。

なんか、心を読まれてる気分だ…。

「お顔が緩んでいらっしゃったからじゃないですか?」

「べ、べつに緩むようなことは考えてないっていうか、今の百瀬さんこそ僕の考えを…」

「ふふっ、ただの推測ですよ」

推測…ねぇ。

考えてみれば、翔子ちゃんには二回も考えを指摘された訳だし、僕という人間は異常なほど気持ちが顔に出やすいのかもしれない。

覆面をしてても心音と意思疎通が出来ることを考えれば、全身からにじみ出てる?

…なんかいやだなぁ。

そして、僕がそんな馬鹿なことを考えている間に、翔子ちゃんはバウバウさんのところまで到達していた。

群がっていた戦闘員は、しっかり後の二人が抑えたようだ。

「りゃあぁぁぁ!!」

突進の勢いに乗せて、翔子ちゃんの足が地を離れる。

それは放物線を描くなんて考えもつかないような、低く鋭角的な軌道のジャンプだった。

まるでミサイルだ。

発射地点にはくっきり足跡が残っているに違いない。

「ちぃっ!!」

バウバウさんが鋭く舌打ちをする。

さらに今の彼には、健ちゃんが張り付いている。

と、バウバウさんが目の前の健ちゃんを押さえながら、突然足を大きく振りかぶった。

そしてその足元。

そこにうっすら砂を被った毛玉がある。

それは戦闘のかなり初期、攻撃をくらったフリをして寝転がり、そのままサボっていたフワフワさんの成れの果てだ。

「バウバウふぁいと〜」

「貴様も働かんかぁーー!!」

「あう」

それをバウバウさんは容赦なく蹴りつけた。

「うわっ!」

砲弾と化したフワフワさんの体を、かろうじてかわす健ちゃん。

しかし体勢を崩した所為でバウバウさんの追撃にあい、またも派手に吹き飛ばされる。

「なっ!」

「あ〜れ〜」

そして翔子ちゃん。

空中でかわす術などあるはずもなく、彼女は空中でフワフワさんと激突した。

ぼふっ。

かなりの速度でぶつかったにもかかわらず、気の抜けた音が発生する。

あの蹴りの勢いを完全に殺してしまったらしく、フワフワさんの体はそのまま衝突地点のすぐ下に落ちた。

「ぬぐ…」

そしてその下から、毛玉に巻き込まれた翔子ちゃんが這い出てくる。

彼女にはフワフワさんは敵視の対象として映らないのか、翔子ちゃんは立ち上がると、バウバウさんを睨みつけた。

「貴様らのような輩に、心音様の邪魔はさせん!」

距離が開いた二人に対し、バウバウさんが咆哮を上げる。

「ギャンギャンうるさいのよ! このロリコン!!」

それに対し、翔子ちゃんが叫び返した。

「ロ、ロリ、コ…」

思わぬ言葉に絶句するバウバウさん。

一瞬、騒がしかった戦場に静寂が満ちる。

そして。

「ギィーギィー、ギギギー−ー!!」

その後、すぐに戦闘員さん達から大ブーイングが来た。

うちの組織はその性質上、中高年の層が多数を占めるのだ。

しかも全員が心音を敬愛してたりするから。

「ギィーギィーギィ! ギィーギィーギィ!」

やがて、ブーイングは一糸乱れぬ帰れコールへと発展した。

「こりゃ翔子が悪いな。 最近なんかアレだぞ、40代と中学生の恋愛だって珍しくないんだから」

「それは一般的ではないと思うけど…」

「大体俺はまだ20代…」

復帰した健ちゃんが、戦闘員さんたちを支持する。

敵にもかかわらず、彼らからも同意の声が上がった。

「ギィーギィーギィ。 ギィーギィーギィ」

再度帰れコール。

ちなみに健ちゃんも小声で参加している。

音源が違う所為でバレバレだけど。

「帰ったほうが良いように思われ…」

「っさーーーーい!!」

若干スローなテンポでコールに参加しようとしていたフワフワさんを、蹴り上げた。

「まーたーでーすかー」

彼はバウバウさんのときと同じぐらいの速度で飛んでいき、戦闘員さん達の勢いに押されてこっそり帰れコールをしていた悠二君に直撃。

「ま、また毛玉にっ! ぶっ!!」

そのまま戦闘員さんを巻き込みなぎ倒した。

そしてその時には翔子ちゃんもダッシュをかけている。

身構えるバウバウさん。

しかし彼女は、彼の元へは向かわずに、仲間である健ちゃんに向かってジャンプした。

「いっ!?」

彼女は健ちゃんの真ん前で空中で体を一回転させ、その勢いで見事なローリングソバットを首に叩き込む。

健ちゃんの体は錐揉み回転をしながら、バウバウさんのときの三倍以上の距離を飛行した。

「良しっ」

「良しじゃないよ!」

とりあえずバウバウさんを倒してからという思考は、翔子ちゃんには無かったらしい。

健ちゃんが起き上がってくる様子は無い。

起き上がってもまた殴られるだけのような気もするし。

とにかく、戦局はまた一対一に戻ってしまったようだ。

「…やっぱり加勢したほうがいいんじゃない?」

控えめに、百瀬さんに提案してみる。

「ん〜…」

すると彼女は、初めて考え込む仕草を見せた。

上を向いて、人差し指を顎下につける。

ヘルメットもあいまって、その仕草はいつもより余計にわざとらしく、ついでに奇妙に見える。

「格闘の素人が行っても、役に立ちそうな局面じゃありませんし」

「でも百瀬さんは、いっつも大勢の人を相手にしてるじゃない」

「かわすとか、誘い込むのは得意なんですけれど」

言葉を切って、百瀬さんはヘルメットを取った。

そして、優雅に髪を流す。

「嫌いなんです。 追いかけるのって」

「嫌いって…」

そういう問題じゃないだろうと突っ込もうとした僕の横に、百瀬さんは移動する。

そしてそのまま、彼女は僕の横に座り込んでしまった。

これ以上この問答を続ける気は無いらしい。

「それよりも、お話をしましょう平助さん」

いつもとは違う、蕩けるような笑みを百瀬さんは浮かべる。

僕は何とか表情を変えないようにしながら、それに頷いた。


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