祐ちゃん日記〜前フリ
夢。
夢をみている。
肉まんをおごっている。
真琴におごっている。
漫画もおごっている。
魁!!男塾。
最初は4対4。
8対8。
16対16・・・。
すごいなぁ。
「うおふ!!」
俺は飛び起きた。 なんて恐ろしい夢だ。
しかし、あの漫画についてはつっこむまい。
あれへのツッコミをしたら、このSSが終わってしまう。
・・・恐ろしいのはもう一つのほうだ。今でも色んなやつに貢がされているのに、真琴にまでたかられたら破産してしまう。
目が覚めてしまったので、学校いくよ〜目覚まし弐号を止める。
ちなみに壱号は恥ずかし目覚ましにエボリューションした。
何故あんな夢をみたのか・・・。
そこで俺は結論を見つける。
あれが布団の中にいるのだ。
最近なかったので油断していた。
こいつも断り無しに入ってくるとは、図太くなったものだ。
「こら、お前は勝手に人の布団に入るな!」
俺が揺さぶると、もぞもぞと起きだしたのはセクシーバディーのお姉さんではもちろんなく、中学生にも劣るがっかりボディーなマコピーだった。
「何でお前がここにいる?」
「ピロが一緒に寝たいって言ったのよ」
いつもの言い訳。なんか、目覚めが妙に良い所を考えると、狐・・・・いや、狸寝入りか?
「そういうときは、ちゃんと俺に断ってから入れ」
いや、断ったからといって入って良いということにはならないんだが。 俺も頼まれても断れないだろうし。
「あ、そうだ祐一。
真琴に肉まんおごりたいでしょ」
唐突にこいつは何を言い出すか。 夢を思い出し、身震いする。
「まったくおごりたくないな。
むしろ今はその気持ちが最高潮だ」
「何で? せっかく昨日枕元で洗脳したのに!」
「洗脳?」
「可愛い真琴に肉まんおごれ〜って・・・」
ごん! ふう、朝から無駄な体力を使ってしまった。
「おはよう祐一くん」
リビングに下りると、そこにいるのはあゆだ。
朝飯を悠々と食べている。
「たいやきはおごらんぞ」
「え、何?」
俺は不機嫌なままつぶやいたが、もちろんあゆに伝わるわけはない。
こんなときこそ、考えてることが伝わればいいのに。
いや、真琴がベッドにいたことが伝わっちゃまずいか。
「ベッド?」
「う、言ってるし」
幸い全部は言っていなかったらしい。
やましいことはしていないが、知られないに越したことは無いだろう。
「ところであゆは、何故ここにいる?」
「えっとね、秋子さんが・・・」
「つまり朝その辺で万引きをしていたら、秋子さんがお前をデットリーレイブ(餓狼より)で止めて、説得した。 感動したお前は、『バスケットがしたいです』と号泣。 フルーツバスケットを敢行。
そっちかよ!?というツッコミを誰もせず、美少年もねずみになる騒ぎだったんだな」
俺はその状況を思い浮かべ遠い目をする。
そんな夢を俺は見たかった。
「うぐぅ、よくわかんないけど違う」
「ええ、私が誘い込んだんですよ」
「うわ!」
気がつくと、後ろに秋子さん。
つーか、誘いこんだってなんですか?
「祐一くんって、昔から訳の分からないこと言うんだもん」
「訳がわからないのはお前がうぐぅだからだ」
「うぐぅ、うぐぅって呼ばないでよ」
え〜と、前のがうめきで、後のが抗議だ。 分かりにくいぞ。
「祐一さん、あゆちゃんをいじめてはダメですよ」
「悪いのは俺ですか?」
「そうよぅ、祐一が悪い!」
後ろからけたたましいシャウトをあげたのは真琴だ。
転げんばかりの勢いで階段を下りてくる。
ピロを一生懸命さすっているが、本当はその下のたんこぶをさすりたいのだろう。
「祐一の言うことは、イタ!いっつも意味不明、痛い!なんだから」
どうやら動くたびにピロがたんこぶをつかんで痛いようだ。
降ろせばいいのに。
「久しぶりに聞いたな、マコピー語」
「ちがう! ぎゃ!」
「ボクは初めて聞いたよ」
あゆは感心したような声をあげる。
「うぐぅ、うるさい!」
真琴の発言だ。 この呼び方は改める必要ありか?
いつものように、扱いは低い。
「うぐぅ」
あゆの発言。
「よし、お前は今日から堀江由衣だ」
俺は混同しないために、奴に新しい名をつけた。
ん、新しくないか?
「やっぱり、よくわかんないよ」
ふ、高度な頭脳についてこれないようだな。 天才は孤独だ。
「・・・そうですね、祐一さんは昔からこういう子のようです」
あれ、なんか秋子さんの言い回しがおかしくないか?
そう思った俺が視線を向けると、その手には一冊の本が。
「なんですか、それ?」
「祐一さんの日記です」
「なんですと!」
「マメだね、祐一くん」
「・・・返してください」
「ダメです、みんなで楽しく朗読しますから」
ひでぇ・・・。 なんか俺に恨みでもあるんですか?
「祐一さんは、ちょっと大人しくしていてくださいね」
そう言った秋子さんの手には縄。
なんで?
俺が疑問を持つよりも早く、秋子さんは縄を鞭のようにしならせ、俺にからませた。
片手には日記帳を持ったまま、縄を持った腕を一見無造作にぶんぶん振る。
その動きとともに、俺の体は束縛されていた。
何でそんなに手馴れてるんでしょうか?
僕の頭は疑問でいっぱいです。
しかも、安易に亀甲縛りなどいかず、海老縛りというところがにくい。
ちなみに、亀甲縛りは見た目は複雑だが、初心者にもできる意外ににお手軽な奴で、拘束度も低い。
北川が言っていたので、多分間違いないだろう。
あいつ、何になるつもりなんだ?
ともあれ、俺は完璧に動けなくなってしまった。
「ふふふ、いいざまね、祐一。 ところで、日記って何?」
今ごろマコピーがマコピーゆえのボケをした。 こいつも飯塚雅弓に改名か?
個人的に、かなりOKだが。
「日記というのは、その日に起こったことや、公では口にできない罵詈雑言、3年後には絶対見られないポエムなどを書くものですよ」
「そうなの?」
「その通りだ」
ずいぶん偏った言い方だが、概ね当たっている。 真琴もまた一つ人間界のことを学んだな。
「祐一くんのポエム、早く見たい!」
あゆが意気込む。 ポエムと決め付けるな。
「その前に、名雪を起こしてきましょう」
「あ、ボクが行くよ」
「いえ、昨日名雪が寝たのは9時ですからね。 かなり頑固でしょう。
私が行ってきます」
あゆの申し出をやんわりと断り、秋子さんは2階に上がっていった。
昨日は世界のキャットちゃん☆99連発がやってたからな。
改変期になるとテレビ局も大変だ。
テレビを見て、名雪はなぜかアレルギーを出していた。
想像妊娠みたいなもんか?
「きゃああぁぁぁぁぁ!!!!」
しばらくして、二階から物凄い悲鳴が響いた。 文字色からして名雪だ。
フォントサイズ36、!マーク4つ。 ほぼ最大級の叫びだな。
多分、音波となってガラスぐらい割れただろう。
とっさに耳をふさいだあゆたちはともかく、緊縛中の俺と肉球ハンドのピロは大ダメージをこうむった。
さらに少し間があいて、秋子さん、そしてケロピーに隠れるようにしてあるく名雪が降りてきた。
「さすが国府田マリ子。 歌も歌えるマルチな人。 音量も桁違いだな」
ちなみにマルチの人は、まだ耳を塞いでいる。
名雪はまったく反応を示さず、肩を震わせている。
「笑えないよ」状態だ。
「秋子さん、何をしたんですか?」
「企業秘密です」
この時、言われるだろうと思ってたけど、聞かずにいられなかった俺の心境。そして、追及できない俺の心情を察してくれ。
「名雪、しっかりしなさい。・・・じゃぁもう一回・・・」
「!!、わたしとっても元気だよ!だお、だお、がお!!」
秋子さんがなにやら耳打ちすると、名雪は不自然なぐらい元気になった。
口癖も変わる動揺っぷりだ。 殴ってやったほうがいいか?
なんか、今日の秋子さんは怖いっす。
明日からは洗い物も手伝ったほうがいいのかも知れない。
「さて、名雪も元気になったことだし、読みますか」
「え、何を?」
名雪は事情を知らないらしい。 まぁ、起きて5分も経っていないのだから当然か。
「祐一くんの日記だって」
「何でそんなに嬉しそうなんだ?」
そんなに人の日記が見たいか。 俺はあゆの日記なんか見たくないぞ。 頭が痛くなりそうだ。
名雪と真琴も同様に興味なし。
秋子さんのは・・・怖いから別の意味で見たくない。
「祐一、日記なんかつけてたの?」
「いや、記憶に無い」
・・・そういえば、俺はそんなことをするような人間じゃないぞ。
ノートすらまともにとらないのに、日記なんてめんどくさいことするか。
「じゃぁそれ、誰の日記なのよぅ」
真琴の疑問は、そこにいる全員の疑問だった。
頬に手をあて、笑っている秋子さん以外は。
続くぅ
next