混迷⇔エリスポットWMP
出演… | 水都栄一(ミズトエイイチ) | 高校2年生。 純正オタク。 エネルギーは無駄にあるが、全てにおいて熱しやすく冷めやすい。 |
加藤清(カトウキヨシ) | 高校2年生。 むっつりオタク。 家族の前ではアニメを見ないタイプ。 | |
森屋京子(モリヤピピニーデンキョウコ |
高校1年生。 腐女子。 基本的に確信犯。 |
第18公演
幕が上がる。 | |
教室の風景。 | |
二人の生徒が話をしている。 | |
水都 |
しっぽ〜のあるて〜んしぃ…ハァ…。 |
加藤 |
何だよ、テンション低いな。 |
水都 |
アレ,天使のしっぽ、Chuのほう、毒じゃないほう、ダメだ…。 |
加藤 |
ええと、それは脚本とかの話? |
水都 |
亀が主人公以外好きになるっていう脚本もダメだし、今まで萌えアニメだったのに、急に美少年ユニットのCDって、明らかに客層間違えてるが、そうじゃない。 |
加藤 |
充分だと思うけど。 |
水都 |
それより問題は…。 |
加藤 |
なんだよ。 |
水都 |
しっぽ無いじゃん。 |
加藤 |
そんなの、放映当初から突っ込まれてるだろ。 メイド服も着てないし。 |
水都 |
それでも、俺は期待していたのだ、奴に。 |
加藤 |
しっぽを? |
水都 |
そうだ、しっぽだ! しっぽアニメだ!! |
加藤 |
…どんなのだよ、それ。 |
水都 |
しっぽ娘満載! 猫しっぽ犬しっぽウサギしっぽ!! |
加藤 |
普通だね。 |
水都 |
金魚しっぽ! 鳥しっぽ! |
加藤 |
いや、それはなんか新しいけどさ。 |
水都 |
ハムスターしっぽ! |
加藤 |
短っ! |
水都 |
カエルしっぽ! |
加藤 |
あるのはおたまじゃくしの時だけだろ!! |
水都 |
そんなアニメを、俺は望んでいたのに…。 |
加藤 |
そんなマイナー期待に応えてたら、業界がつぶれるよ。 |
水都 |
と、いうわけで、今日のテーマは「しっぽ」。 |
加藤 |
何であるある大辞典風なんだよ!? |
水都 |
このしっぽには、昔から数々の効能が挙げられてきた。 |
加藤 |
いや、そのノリ引っ張らなくて良いから。 |
水都 |
まず、分かりやすい感情表現! |
加藤 |
ハァ、もう良いや…。 |
水都 |
例えばご主人様に撫でてもらっても、「子供じゃないんだから」とそっぽを向いている獣娘がいるとしよう! |
加藤 |
仮定長いよ。 |
水都 |
だが、その娘のしっぽは、千切れんばかりに振られていたりする! 実は密かに喜んでいたという素晴らしいエピソードだ。 どうよ? |
加藤 |
いや、どうよって言われても…。 |
水都 |
これだけ言われても何も感じないのか! このニブ藤ニブシ!! |
加藤 |
人の変なあだ名をつけるな! 小学生かお前は!! |
水都 |
もう良い、効能その二! |
加藤 |
何で俺が切れられてるんだよ…。 |
水都 |
弱点であること! |
加藤 |
いや、効能が弱点って訳分からないよ。 ていうかサイヤ人の話? |
水都 |
そういう萌えない種族の話をしているのではない! |
加藤 | しっぽを握られて力が出なくなるとかじゃないの? |
水都 |
ニブシ! まじめにやりなさい! |
加藤 | ニブシ言うな! お前よりよっぽど真面目だよ!! |
水都 |
大体しっぽは握るものではない! |
加藤 |
まぁ、普通の犬とかにやっても嫌がられるけどさ。 |
水都 |
しっぽとは古来より、撫でる、焦らす、こねるの三法により成り立っているのだ!! |
加藤 |
はぁ!? |
水都 |
これにより強情な猫娘も、すっかりメロメロになるわけだ。 |
加藤 |
何の話だよ、それ…。 |
水都 | む、強弱をつけて猫じゃらしのように楽しむのも、それはそれでありな気がしてきた。 どうしよう? |
加藤 |
知るか! |
水都 | 効能その三! |
加藤 | はいはい。 |
水都 | 触手になること! |
加藤 |
ならねぇよ! ていうか、そのネタは、前回散々やっただろ!! |
水都 |
まだやりたりない。 |
加藤 |
ただの欲求かよ! そんな理由でありもしない属性を付け足すな! |
水都 |
触手は世界だ。 |
加藤 |
ハァ…、ただでさえこのネタ、前の猫耳の時と被り気味なのに…。 |
水都 |
被ってなどいない! |
加藤 |
いや、だってしっぽの話とか思いっきりしてたじゃん。 |
水都 | しっぽの魅力は、あんなことだけでは語りきれないのだ! |
加藤 | なんだよ、どのネタも消化不良かよ。 |
水都 | そうではない! しっぽは何も、獣だけのものではないのだ! |
加藤 |
…だから、金魚しっぽとかは規格外だぞ。 |
水都 | 甘い! 悪魔のしっぽといえば、誰もが認めるしっぽ界の重鎮だ!! |
加藤 |
いや、その言い回しは意味不明だけど、悪魔のしっぽって言うと、あの矢じり型の奴? |
水都 |
あぁ、悪魔っ子には必須のアイテムだな。 バイキンマンとか。 |
加藤 |
あれはバイキンであって悪魔っ子じゃないだろ! |
水都 | そんな小さいことにこだわるな。 重要なのはしっぽをつけているという事実のみだ。 |
加藤 | いや、バイキンマンでも良いのかよ! お前こそもっとこだわれ!! |
水都 |
しっぽをつけてるなら、おっさんでも良い!! |
加藤 |
極端すぎだよ! どう考えても、おっさんにしっぽがついたってマイナスポイントにしかならないだろ!! |
水都 |
えっ、手で尻を触れば立派なセクハラだけど、しっぽで触ればギリギリセーフっぽくない? |
加藤 |
無理だよ! 酌量の余地もなくアウトだよ! |
水都 |
ケチッ。 |
加藤 |
ケチッじゃねぇよ…。 |
水都 | こんなにもしっぽが好きなのに、何で分かってくれないんだ!! |
加藤 | 今の説明でそんなもの分かるか!! |
水都 | トカゲの切れた尻尾ですら愛せる! むしろ、あっちが本体だ!! |
加藤 | んなわけあるか! アレは天敵から身を守るための手段だろ! |
水都 | まぁ確かに、しっぽを放り出されたら、間違いなくそっちに行くよな。 |
加藤 | いかねぇよ! お前は畜生以下か!? |
水都 | そんな萌えテクまで計算して生き残るとは、やるな、トカゲ。 |
加藤 | トカゲが凄いんじゃなくて、お前がダメなの!! |
水都 | ならばきっと、しっぽさえつければ森屋だって萌えキャラになれるのが道理だ。 |
加藤 | 今の例じゃ無理だよ! |
森屋 | ……とりあえず、現状じゃ萌えないのは同意なんですね、加藤先輩。(森屋、猫のしっぽを着けつつ入場) |
加藤 | あ、いや、その、ごめんなさい。 |
水都 | おお! にゃんこしっぽだ! これさえあれば………無理だ…! |
加藤 | ダメなんだ…。 |
森屋 | えーっ、何でですか!? |
水都 | 猫しっぽだけでは、ただのサイヤ人もどきだ・・・。 |
加藤 | 確かに、耳とかついてないとただのしっぽのついた人だね。 |
森屋 | く、この程度では陥落しない人たちだと思っていましたが…。 |
加藤 | いや、俺をこいつと同列に扱わないでよ…。 |
水都 | その程度の攻撃で俺達兄弟が堕ちるわけなかろう!! |
加藤 | だから、お前と兄弟になった覚えはない! |
森屋 | ぬぅぅぅ(しっぽがフリフリと動く) |
加藤 | ・・・あのさぁ。 ちょっと疑問に思ったんだけど…。 |
森屋 | はい、なんでしょう? |
加藤 | どうやって動かしてるの、それ?(しっぽを指差しつつ) |
森屋 | え、やだぁ、そんなこと…言えるわけ、ないじゃないですか。(顔を赤らめつつ) |
加藤 | なにその初々しい反応!? |
水都 | あんまり可愛い後輩をいじめるもんじゃないぞ、加藤。 |
加藤 | いや、お前もその暖かさに溢れた瞳は何!? ていうか、さっきから萌えない萌えないって連呼してたのお前じゃん!! |
森屋 | まぁ、今回は事故ということで裁判沙汰は勘弁しておきましょう。 |
水都 | 本人も反省しております。 |
加藤 | 何でそんな深刻な状況に立たされてるの、俺!? |
森屋 | さて、なんか疲れちゃいましたね。 |
水都 | 良し、帰るか。 |
森屋 | は〜い。 |
水都 | しっぽ〜のあるて〜んし達〜、全員しゅーごー1〜2人。(水都、森屋、舞台袖に向かって行進) |
森屋 | メイド〜服のて〜んしたち〜…。(二人、揃って退場) |
加藤 | 何だよその終わり方、ちゃんと説明していけよ! って、ちょっとおい、勝手に帰るなってぇ!! |
舞台暗転 | |
幕が降りる。 |