『児ポ〜、児ポだよ〜、次から二次元も規制だよ〜』
ぱち!
俺は半覚醒のまま目覚ましを止めた。
「爽快な朝だな・・・」
祐一と子供たち
俺、相沢祐一は、名雪を起こそうと部屋の前に立った時点で、今日が日曜だと気づいた。
「う〜ん、祐一まいってぃんぐ☆・・・・」
俺の脳はもうだめかもしれない。
起きてしまったのはしょうがないので、とりあえず一階に降りることにした。
「あら祐一さん、お早いんですね」
「ええ、起きちゃいまして」
自分で目覚ましまでかけたとは言えない。
「おはようっ! 祐一くん」
「よお、あゆ」
食卓にあゆがいるが気にもしない。
フランクに挨拶を返すのみ。
「けだもの、挨拶ぐらいしろ」
肉まんを詰め込む真琴を見る。
「ふが、ゆ〜ひちほはよう」
「・・・まぁいいか」
真琴の口の中にいくつ肉まんが入っているかより気になることがあった。
「おはようございます、祐一さん♪」
「相沢さん、おはようございます」
「なんでお前らがいるんだ?」
目の前にはあまり水瀬家では見かけない顔。
「天野と栞の一年コンビか」
「珍しい括られ方ですね」
「そんなに接点も無いですけど」
なんか息が合ってる。
案外いいコンビっぽいぞ。
「じゃぁ、なんでお前らが一緒にここにいるんだ?」
「秋子さんに誘われました」
ほれ、ハモるし。
「うぐぅ、ボクも誘われたんだよ」
もう、驚くことも無いので無視。
「うぐぅ・・・」
「秋子さん・・・いくらなんでも呼び過ぎじゃないですか?」
ホームパーティーでも開かんばかりの数だ。
「食卓は賑やかなほうがいいでしょう」
「はぁ・・・・」
もう、なんていうかそう言われてしまうとなにも言えない。
秋子さんの言葉全般においてそうなんだが。
「しかし・・・」
俺は食卓を見まわす。
「祐一お父さんな気分だ」
「どう言う意味です?」
「今日は子供大集合と言う意味で」
目の前の子供達を見まわす。
「ロリキャラとか言う人嫌いです!」
「うぐぅ・・・祐一くんがバカにした〜!」
「むぐ・・・ゆーいちの馬鹿って言ったら自分がバカ!」
俺は馬鹿とは一言も言ってないぞ。
「・・・・」
天野が、なぜか俺のほうをずっと見ている。
「ん? どうした、天野?」
「い、いえ・・・・、なんでもありません」
珍しく狼狽して視線をそらす天野。
さては・・・。
「おばさん扱いされなくて不満か?」
「そんなわけありません」
「いつもおばさん扱いなのに、ロリキャラとして扱われてもいいのかな、でもおばさんよりはマシだから黙っておこうと言う複雑な乙女心か?」
「まさか、考えを読みましたか?」
大当たりらしい。 いつもは俺がその恐怖にさらされるんだけどな。
「そんなことより! 真琴達のどこが子供なのよぅ!?」
・・・そんなもの決まっていると思うが。
「躯(カラダ)」
「うぐぅ・・・」
「あう〜」
「えう〜」
「・・・」
天野を除いた3人がうめく。
ていうか、天野にはああ言う便利な一言が無いからな。
…が、そこで天野が口を開いた。
「・・・もけ」
「勝手に口癖を作るな!」
どう言う心境の擬音だ、それ。
「私だけセリフが無いと言うのも、どうかと思いました」
「はっちゃけやがって」
今日の天野はラジオカスタムなのか?
「…やっぱり、納得いきません!」
そう言って立ちあがったのは栞だ。
このままだと、このSS自体が天野にもって行かれそうな雰囲気だったからかも知れない。
「胸があれば大人ですか、母性を感じると言うんですか!?」
だから、そう言う敗者の論理が展開されるのさ…。
「そんなことは幻想でしかありません! 見てください、これは脂肪です、既に生産性すら失ったデットウェイトです!」
そう言って栞は、セーターに包まれた秋子さんの豊満な御胸様を指差した。
…その勇気だけは誉めてやりたい。 が、死者は賞賛など受けられないだろう。
叔母が握るオレンジ色のジャムを見れば、彼女に反論するのも酷に思えた、しかし。
「じゃぁ、お前の胸は機能美なんだな」
「う・・・」
「お前は嬉しいんだな、身体測定の時胸囲が変わっていなくて」
「えぅ・・・」
「得したと思うんだな、泳ぐときに水の抵抗がなくて」
「う、う・・・・」
「洗濯板と呼ばれようと、岸壁と呼ばれようと、お前はそれは誇りに思うって言うんだな!」
「うううううぅぅぅぅ・・・・」
とどめは俺が刺してやる。
自惚れを含んだとしても、それが手向けであり、ジャムを目の前にした者への救いだと感じるからだ。
「ううぇぇぇ〜〜〜ん、そんなこと言う人嫌いです〜!!!」
テーブルを離れ、何処へと栞は走り去っていった。
相変わらず、佐藤朱さんの泣き演技は良いなぁ・・・。
「あらあら、祐一さん、苛めてはダメですよ」
「そういう優しい叔母を装ったセリフは、そのゲルを廃絶してから言うべきだと思います」
既に蓋があけられていたオレンジ色のジャムを見ながら、俺は自分のしたことが正しかったと確信した。
「祐一君、ひどいよ! 人の気にしてることを言うだなんて!」
そんな俺の英断も知らず、走り去っていった栞にぺたんこ同盟的シンパシーを感じ、俺を罵るのは、うぐぅ。
「大人の事情も知らんで、お子様が勝手を言うな」
「また子供って言ったぁ! ボクは祐一君と同い年だもん!」
確かに、実年齢はそうなんだが。
「…でもお前、最近まで眠ってたじゃん」
「うぐぅ、たしかにそのせいで、発育が人よりちょぉぉぉぉぉぉぉぉっとだけ遅れたよ」
お前のちょっとに、どれだけの幅があるのかは興味の尽きないところだが。
「あいにく、俺が言いたいのはそういうことじゃない」
むしろ…。
「眠ってる間、お前は義務教育すら終わってない訳だ」
その他、人生における思春期も味わってない訳で。
「つまり、あゆちゃんの中身は、まだ10歳ってことですね♪」
「あ…」
言いにくかったことを、秋子さんが♪つきで言ってしまった。
栞に儀式を施せなかった憂さ晴らしだろうか?
「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅーーーー!!」
見事なドップラー効果と共に、あゆも泣き去ってしまった。
いや、玄関で「べちっ」と言う音がしたから、途中でこけたと思われる。
「真琴は大人だもんね〜」
で、いまいち状況がわかってないのが真琴。
「…あなたに至っては、人間として一年も生きてませんよ」
天野のツッコミ。
お前ら、仲悪かったのか?
「う、う、う・・・・・・」
そして真琴も…。
「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「って、ピロが泣くんかい!!」
今回描写すらされていなかったピロシキ(妻子持ち)に奇妙な泣き(鳴き)声を上げさせながら、真琴も消えていった。
で、残ったのは俺と秋子さんと天野。
ずずず〜とお茶をすする天野。
秋子さんとこの娘は、精神を入れ替えてやれば釣り合いが取れるのかもしれない。
「しかし、相沢さんも奇特な方ですね」
「何がだ?」
「やることやった相手を、ロリキャラだと貶め、自らロリコンだと証明するのですから」
「・・・他に言いかたは無いのか?」
「真性マゾヒストですか?」
今日の天野には、きっとサディスト仕様だっただろうと、俺は悟った。
今夜は秋子さんに慰めてもらおう。