混迷⇔エリスポット


出演… 水都栄一(ミズトエイイチ) 高校2年生。 純正オタク。 エネルギーは無駄にあるが、全てにおいて熱しやすく冷めやすい。
加藤清(カトウキヨシ) 高校2年生。 むっつりオタク。 家族の前ではアニメを見ないタイプ。

       


第4公演

病弱っ娘


  

 

幕が上がる。

 

教室の風景。

 

二人の生徒が掃除をしている。

 

水都

 

病弱っ娘って、切ないよね…。

 

加藤

 

なんか、気持ち悪いテンションではいるな…。

 

水都

 

病気と戦う健気な姿! 体は弱いが心は強い! 奇跡で助かるも良し、儚げに死んでしまうのもまた良し!!

 

加藤

 

死んじゃうのは悲しいけどね。

 

水都

 

フィクションなんだから泣くなよ。 気持ち悪い。(一歩下がる)

 

加藤

 

お前が良いって言ったんだろ! 急に引くなよ!

 

水都

 

0時ぴったりに死ぬ病気ってなんだよ。  そっちのほうがよっぽど奇跡だろ。

 

加藤

 

kanonの栞か…。

 

水都

 

てか、病弱っ娘ならベッドの上にいて然りだろ。

 

加藤

 

まぁ、重い病気ならそうだろうね。

 

水都

 

透析の一つもして当然だろ。

 

加藤

 

いや、それは病気の種類によると思うけど。

 

水都

 

はだけた胸に聴診器当てろよ。 座薬入れろよ! カテーテル尿道に入れろよ!!

 

加藤

 

お前の例は偏ってるよ!!

 

水都

 

しかし、病気は重ければ重いほど盛りあがるよな。

 

加藤

 

そうなの? ってか盛りあがるとか言うな、不謹慎だろ。

 

水都

 

だって、痔の女の子とじゃロマンスが生まれないだろう。

 

加藤

 

それは病名のせいだって!

 

水都

 

しかし、切れ痔ならダイスペクタルだ。

 

加藤

 

ならないよ! 例が悪すぎるわ!

 

水都

 

で、今の例で分かってもらえたと思うが、重い病気ほど、愛しさと切なさは増す。

 

加藤

 

わかんないっての。

 

水都

 

その例で行くと…。

 

加藤

 

一番重い病気?

 

水都

 

植物人間との恋愛だな。

 

加藤

 

意識ねぇよ。

 

水都

 

そんな彼女との交流。 でも彼女は話せないから、会話は自分の頭の中で。

 

加藤

 

それは妄想って言うんだよ!

 

水都

 

分かってる、分かってるよ、君の気持ちは。(遠くを見だす)

 

加藤

 

全然分かってないっつーの!

 

水都

 

さぁ、いつものように体を重ねよう!(自分の体を抱く)

 

加藤

 

それはやばいだろ! やめろよ!

 

水都

 

まぁ、頭の中でなんだけどな。

 

加藤

 

それも妄想かよ!

 

水都

 

当たり前だろ、常識で考えろ。

 

加藤

 

お前にだけは言われたくないよ!

 

水都

 

まぁ大丈夫。 病気なんて簡単に直るさ。

 

加藤

 

不治の病とかあるだろ。

 

水都

 

はっはっは、シェンロンに頼むか、トランクスに未来から薬を取ってきてもらうかすればいいのさ。

 

加藤

 

両方ドラゴンボールじゃん。

 

水都

 

え? 気にするなよ、頑張れば何とかなるさ!

 

加藤

 

ならないこともあるだろ。

 

水都

 

そんな事言うな、俺がついてる!(前に進み出て手を広げる)

 

加藤

 

…なんかお前、おかしくないか?

 

水都

 

ああ、遺言なんて言うなよ。 おい! おい!!(加藤の肩に手を置き、ゆする)

 

加藤

 

何? なんだよ!?

 

水都

 

死ぬなーーーー!!(激しく加藤の体を揺さぶる) …は!(はたと気づいたように)

 

加藤

 

何言ってるんだよ!? (水都の手を払いのける)

 

水都

 

…今、俺の彼女が死んだ。

 

加藤

 

まだ妄想してたのかよ!

 

水都

 

まぁ、お前も言わば俺の妄想だけどな。

 

加藤

 

意味わかんねぇよ!

 

舞台暗転。

 

幕が降りる。

   


戻る TOPへ