混迷⇔エリスポット
出演… | 水都栄一(ミズトエイイチ) | 高校2年生。 純正オタク。 エネルギーは無駄にあるが、全てにおいて熱しやすく冷めやすい。 |
加藤清(カトウキヨシ) | 高校2年生。 むっつりオタク。 家族の前ではアニメを見ないタイプ。 |
幕が上がる。 | |
教室の風景。 | |
二人の生徒が掃除をしている。 | |
水都 |
病弱っ娘って、切ないよね…。 |
加藤 |
なんか、気持ち悪いテンションではいるな…。 |
水都 |
病気と戦う健気な姿! 体は弱いが心は強い! 奇跡で助かるも良し、儚げに死んでしまうのもまた良し!! |
加藤 |
死んじゃうのは悲しいけどね。 |
水都 |
フィクションなんだから泣くなよ。 気持ち悪い。(一歩下がる) |
加藤 |
お前が良いって言ったんだろ! 急に引くなよ! |
水都 |
0時ぴったりに死ぬ病気ってなんだよ。 そっちのほうがよっぽど奇跡だろ。 |
加藤 |
kanonの栞か…。 |
水都 |
てか、病弱っ娘ならベッドの上にいて然りだろ。 |
加藤 |
まぁ、重い病気ならそうだろうね。 |
水都 |
透析の一つもして当然だろ。 |
加藤 |
いや、それは病気の種類によると思うけど。 |
水都 |
はだけた胸に聴診器当てろよ。 座薬入れろよ! カテーテル尿道に入れろよ!! |
加藤 |
お前の例は偏ってるよ!! |
水都 |
しかし、病気は重ければ重いほど盛りあがるよな。 |
加藤 |
そうなの? ってか盛りあがるとか言うな、不謹慎だろ。 |
水都 |
だって、痔の女の子とじゃロマンスが生まれないだろう。 |
加藤 |
それは病名のせいだって! |
水都 |
しかし、切れ痔ならダイスペクタルだ。 |
加藤 |
ならないよ! 例が悪すぎるわ! |
水都 |
で、今の例で分かってもらえたと思うが、重い病気ほど、愛しさと切なさは増す。 |
加藤 |
わかんないっての。 |
水都 |
その例で行くと…。 |
加藤 |
一番重い病気? |
水都 |
植物人間との恋愛だな。 |
加藤 |
意識ねぇよ。 |
水都 |
そんな彼女との交流。 でも彼女は話せないから、会話は自分の頭の中で。 |
加藤 |
それは妄想って言うんだよ! |
水都 |
分かってる、分かってるよ、君の気持ちは。(遠くを見だす) |
加藤 |
全然分かってないっつーの! |
水都 |
さぁ、いつものように体を重ねよう!(自分の体を抱く) |
加藤 |
それはやばいだろ! やめろよ! |
水都 |
まぁ、頭の中でなんだけどな。 |
加藤 |
それも妄想かよ! |
水都 |
当たり前だろ、常識で考えろ。 |
加藤 |
お前にだけは言われたくないよ! |
水都 |
まぁ大丈夫。 病気なんて簡単に直るさ。 |
加藤 |
不治の病とかあるだろ。 |
水都 |
はっはっは、シェンロンに頼むか、トランクスに未来から薬を取ってきてもらうかすればいいのさ。 |
加藤 |
両方ドラゴンボールじゃん。 |
水都 |
え? 気にするなよ、頑張れば何とかなるさ! |
加藤 |
ならないこともあるだろ。 |
水都 |
そんな事言うな、俺がついてる!(前に進み出て手を広げる) |
加藤 |
…なんかお前、おかしくないか? |
水都 |
ああ、遺言なんて言うなよ。 おい! おい!!(加藤の肩に手を置き、ゆする) |
加藤 |
何? なんだよ!? |
水都 |
死ぬなーーーー!!(激しく加藤の体を揺さぶる) …は!(はたと気づいたように) |
加藤 |
何言ってるんだよ!? (水都の手を払いのける) |
水都 |
…今、俺の彼女が死んだ。 |
加藤 |
まだ妄想してたのかよ! |
水都 |
まぁ、お前も言わば俺の妄想だけどな。 |
加藤 |
意味わかんねぇよ! |
舞台暗転。 | |
幕が降りる。 |