CROSSCHANHUEL〜黒須ちゃん増える〜


 

観測基点その一。

黒須太一NO.00000000032。

接続。

 

「に、しても無事に復活できてよかったじゃないですか、先輩」

山辺美希が意図的に脳を天気にすることによって、アホな子のごとき声色で激☆愛貴族の黒須太一に笑いかける。

ちなみに『激☆』は私め愛貴族黒須太一がカムバックとともにパワーアップした証拠であり、コミック力場を応用した主人公らしい特殊技能といえるであろう。

同時に戦闘力のインフレを起こす要因でもあるので、そこはそれとして注意すべし。

「「「「「「復活ゆーな。 別次元でバリバリ存在してたっちゅうねん」」」」」」

ただ今多重音声でお送りしています。

モニターの障害、ライターの誤字の可能性は否定できませんが、どうぞそのままお楽しみください。

「本当に、今時のアングラは凄いんですね」

「アングラて…、でも科学の勝利って感じですかねー」

メガネをかけたお婆のような口調で、メガネをかけたみみ先輩がのほほんと。

しばらく見ない間に先輩は女学生(倫理的規制により詳細はお教えできません)ではなくなっていた。

あの空色の内枠をはみ出す白い衣に包まれた偉大な双球を拝めなくなったのは残念だが、今日着ているトータルネック(太一誤)も胸を強調する意図が無いのに強調されている感が出ていて中々ナイスデスだ。

「分かりやすい場所を見てにやけないでください。 いやらしい」

「「「「「「うるさいうるさい! これは人類の本能だ、 くやしかったら俺の本能をエレクトさせて見せろ!」」」」」」

「へ、変態!」

こちらの素敵罵りは霧ちん。

エレクトさせるのは勿論物理的な方法で物理的な部分をでも可。

それをジェスチャーつきで示すと、彼女は目に見えて赤くなった。

「「「「「「フッフッフ、生娘でもあるまいに」」」」」」

「なっ、あ、あなたがそれを言うんですか!!」

こげなこと言ってはおるが、この娘、俺の帰りを知るやいなや、寒い北国から凍った涙と鼻水を輸入して戻ってまいりやがっためんこい奴だ。

うむ、新しい制服もやたらにいやらしい。

「せんぱーい。 多人数でそんな卑猥なポーズ取らないでくださいよー。 めちゃめちゃ不気味じゃないですか」

「「「「「「黙れ! この膜無し!」」」」」」.

「うわ、せめて非処女といってくだされば返しようもあったと言うものを…」

どう変わるか物凄く気になるが気にしたらこちらの負けだ。

って、しまった、もう気にしている!

不肖、黒須太一は、某魔法使い激似のあの娘の詐術という非情(誤字にあらず)に現実的な魔術で、地に落ちたイカロスとなってしまった…。

「…良いからとっとと話を進めなさいよ。 まったく、ただでさえ混乱する状況なんだから」

読者と作者に優しい台詞を振りまくのは、ハラキリ冬子。 通称武士ギャル。

最初に冬子の制服姿を見たときは、コスプレかイメクラかと心配したのだが、そういう事ではないらしい。

「「「「「「キャビアを大切にしないから、そんなことになるんだぞ」」」」」」

「へ? なんのこと?」

だから無駄に感嘆符を使うな。

「「「「「「キャビアの影響で家が没落したから、制服を着てるんでしょ」」」」」」

「だっ、誰の家が没落したって言うのよ!」

「「「「「「これからは自らを、落ち武者ギャルと名乗るが良い」」」」」」

ちゃきん!

説明しよう! ハラキリ冬子の第一号愛刀グランギ・ニョールは、彼女との死闘に辛くも勝利した愛貴族黒須太一の手で滝の中に投げ入れられた!!

しかし、冬子はあきらめなかった!

彼女は幻の金属アダマンタイトと地震なまずの髭を元とし、使用人のメイドさん幾人もの生き血を使って鍛え上げ、さらには自らの闇次元チカラを上乗せし、新たなる妖刀を練成したのだ!!

「「「「「「その名も暗黒次元妖刀ハラキリトー…」」」」」」

「人の愛刀に、勝手なエピソードをつけるなぁっ!!」

「のぐぁぁ!!」

光速を超え召還された暗黒次元妖刀が、光速の更に上っぽい速度で俺の前髪をはらった。

衛星からの電波を元に予め軌道を予測していた俺の音速回避が無ければ、今頃真っ二つだった…。

「ぺけ君。 音速は光速より遅いですよー」

「愛しい後輩が半分に割れてしまいそうだったのに冷静にツッコミを入れる先輩なんて、ちょっとだけ嫌いだい!!」

勢い余って尻餅をつきながら、俺は先輩に抗議した。

ちなみに何故多重音声が解除されたかといえば、それにはそれなりの事情がある。

「大体なんで俺だけを狙う! 後ろに2号、3号、4号、5号、ライダーマンと豊富にいるではないか!!」

「「「「「いや、テクニシャンの俺が技の一号だろう」」」」」

後ろを振り返れば、同じボケをするクールファイブな五人組。

あっはっは、あいつら髪も全員真っ白だし、鷲鼻でしかもそれがちょっと曲がってやがる。

「先輩。 何で笑いながら泣いて、しかも自分の鼻をつまんでるんですか?」

「日々成長しつつある偽ロリーが、本家魔法少女のような末路を辿ると思うと、不憫で鼻をつままざるおえないのだ」

「うわー。 全国の山辺美希ちゃんファンの希望を殺意に変換する素敵ワードですねー。 でも美希は日本人ですから、あんなバタ臭い顔にはなりませんよ」

「「「「「「バタ臭いってあーた」」」」」」

6人でツッコミを入れる。

全国にいる現在の魔法少…魔法女ファンを敵に回す発言ですよ。 まぁ、数的には良い勝負になるか…。

「に、しても…これだけ太一がいると、鬱陶しいという他ないな」

「「「「「「美麗とかゴージャスとかメトロポリタンだとか色々あるだろ。 この姉狂い」」」」」」

「いや、無いって。 最後の意味分かんないし」

まるでツッコミ担当といわんばかりのこの平凡な男は、世間では有名なシスタージャンキー友貴だ。

あまりに姉を慕うばかりに、ここ数週間で適応係数が跳ね上がったとまで噂されている、筋金入りのアレである。

「しかし、これだけ太一がいると実にメトロポリタンだな」

「「「「「「お前は人のボケを無許可で使うなっつうの」」」」」」

「ん? この表現は使用済みだったのか?」

「今までのやり取りを聞いてないでそのボケが出たのかよ…」

この次元空間を超越したボケをかますのは、桜庭ラバ浩。

深い描写をしてはいけない真性中の真性のアレである。

そもそも全国放浪をしていたはずなのに、いつの間にか俺の元へ馳せ参じているのがおかしい。

頭に編み笠体にアロハシャツ。 需要も無いのにスパッツを履いておにぎりを持っているのがおかしい。

つまりはおかしい奴だ。

「うぅぅ…明日から私服で登校する」

放置している間になにやら黄昏ている冬子。

「「「「「「おぉ、あの小林幸子のような自らの十倍程もあるあの私服か。 しかも大事な所には余すところなく穴が開いているというあの」」」」」」

キィン!

優しく慰めてやろうとした俺の耳に、普通の刀ではしないはずの素晴らしい抜刀音が響く。

説明しよう!

 暗黒次元妖刀ハラキリトールは、使用者の気合が130を越えると全体攻撃が可能な必殺技を放つことが出来るのだ!

その名もハラキリ流奥義・外威射不治邪馬天婦裸万歳斬り!!

最近のくらっても相手が瀕死で済むような軟弱なものではなく、当たれば即死という玄人も大満足の一太刀だ。

「「「「「「って、うぎゃー!!」」」」」」

ゲンジンなどを満足させるために俺が死んでどうする!

ヘルプミーペルプミー! 助けて七香ママン!! ちなみに初体験はやっぱり制服で学校でしたか!?

『ううん、道頓堀でバニーガールでした。 てへっ』

マジで!? そいつぁクールだね!

『ごめん、ウソ』

犯すぞこの非処女子高生。

『倫理的に引っかかるから女子○生とか言うな。 このTHE・近親相姦野郎マザーファッカー』

ごめんなさい美しいママン。 ていうか光速を超えた光速を超えた光速で迫ってくるハラキリ武士ギャルの刀が物凄くスローに見えるよ。

『うん、それは太一が死ぬ間際だからだね。 もしくは某スタンドで殴られて精神が暴走してるって感じ?』

いや、聞かれても。 つーか俺の幻想なんだからとっとと帰れ。

『いーじゃん。 どうせアタシの出番なんてここだけなんだし。 ちゅーか母親に帰れだなんて、この子は親不孝ものだよまったく』

お空からの電波を受信している間にも、冬子の刀は我が素晴らしいブラッドをまとめて吸おうと、ゆっくり迫ってくる。

避けようとするが体の動きもゆっくりだ! きっと痛みもゆっくりだ!

助けてママン!

『ごめん、無理』

だから帰れ。

『自分が呼んだくせに』

ぱしっ。

冬子の刀が今まさに美男子の柔肌を裂こうとしていたその時、その腕を掴む者がいた。

「…太一を傷つけるのは、許さない」

「ぐっ」

曜子ちゃんだ。

さっきまでノートパソコンでなにやら作業をしていたが、俺がピンチに陥ると光速を超えた光速を超えた光速を超(以下略)で俺を助けてくれた。

冬子は彼女に睨みを効かせたが、自分でもやりすぎたと思ったのか、お嬢様らしい見事な勢いでフンッと顔を背けると、腕を払って刀を収めた。

ちなみにここは久々に帰った我が家の居間。 いや、とはいえ居候だけど。

ハラキリ冬子が家具を切らないかとハラハラの連続だ。

ずっと空けていたのに部屋がそのままだったのは、非常にありがたい。

掃除は曜子ちゃんがしてくれていたらしいので、後で丁重に礼を言っておかなければ。

今はホラ、みんないるし。

黒須太一は愛貴族であるが同時にシャイボーイなのだ。 いや、むしろシャイボーイだからこその愛貴族だとも言える。

『チェリーボーイじゃないけどね』

「「「「「「うるさい。 とっとと帰れバカ母」」」」」」

後ろにいる白髪五人組が俺と同じツッコミをする。 みんなして同じ電波を受信していたのか。

「いや、ていうか助けるんだったら最初の一振りのときに助けてよ」

とりあえず死にそうになったテクニシャン一号こと俺が抗議する。

「あれは太一が楽しんでたから…。 邪魔すると怒られると思った」

そういう判断ですか。

結構シャレになんなかったんだけどね…。

曜子ちゃんだって昔なら、さっきの状況に対しては問答無用で止めに入っていただろう。

まぁ、彼女も笑いが分かるようになったと言うか丸くなったというか。

「変わったね、曜子ちゃん」

「嫌…?」

「うんにゃ、良い感じよ」

「太一も…優しくなった」

おぉ、露骨に嬉しそうな顔しちゃってまぁ…。

やばい。 基本的に虐めるスタンスなのに揺らぎそうだ。

「なるほど、あれが女の敵って奴だな」

「うむ。 後学になる」

「いたのかお前等」

「相変わらずヒドイなお前は」

邪険にしてやったのに苦笑いの友貴。

まさかこいつまでマゾに目覚めたのか?

「そうだな。 やはり放置より言葉攻めのほうがグッと来る」

ちなみにこっちは真性。

手の施しよう無し。 諦めて三代先の転生先まで放置すべし。

「「「「「ヒソヒソヒソ…。 あれが女の敵ですってよ奥さん。 まぁ、やぁねぇ。 今のご時世物騒なんだから、存在自体を規制したほうが良いんじゃないかしら」」」」」」

「うるさいぞ! 2号3号4号5号ライダーマン!!」

「あれだけいるんだから、セリフを分担すれば良いのに…」

「てゆーか先輩。 ライダーマンってライダー4号だから被ってますよ」

奇妙な知識を披露する美希。 ぐっ、弟子の癖に…。

「「「「「やーい、やーい、やーい、やーい、やーいやーいばーかばーかばーか」」」」」

そしてはやし立てる五人組。

「お、お前らだって知らなかったくせにずるいぞー!」

俺は駄々をこねる子供張りの柔軟さで、奴等に体をひねって抗議した。

「気持ち悪いから止めなさいよ、その動作」

「「「「「キャハハハハハ! キショーイキショーイ!!」」」」」」

「うわあぁぁぁん! せんぱぁぁぁい!!」

あまりに悔しいので先輩にすがりついてみる。

結構な勢いで特攻したが、先輩の双球は素晴らしいクッションとなって俺を受け止めてくれた。

というか…。

「…先輩。 もしかして成長しました?」

俺の言葉に、その他5人の太一が反応する。

美希もなにやら興味津々の様子なのは、師匠として嬉しいやら一度ああしてこうした身として悲しいやら。

「え? 身長ならもう伸びてませんよ」

「うっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃ。 お戯れを。 ここの事に決まっておるでしょう」

「えっ、や、そ、そんな!」

その素敵な聖域名バインバインの間に顔をうずめて、うりうりと動かす。

「ほうれほうれ。 素直に白状してしまいなさい!」

「あ、や、やぁん!」

昔の俺なら、先輩に対してここまで大胆なことは出来なかっただろう。

今だってしたくてしている訳ではないのだ。

ただ、右の乳にぶつかれば左の乳に跳ね飛ばされ、左の乳にぶつかれば右の乳に跳ね飛ばされ、僕の意思とは関係なく頭が動いてしまうのですよ!!

「不可抗力じゃー! これは不可抗力なんですじゃー!!」

「言ってることがまったく理解できませーん!」

ガンッ。

なにやら後頭部を痛みのような痛みが襲う…。

つまりは痛いよぅ。

「うわーん、先輩痛いよー!!」

グリグリグリグリグリ。

更に光速で先輩の左右の乳を行ったり来たり。

ガンガンッ!

また叩かれた。

「うわーん、やっぱりいたいよせんぱーい!」

グリグリグリグリグリグリグリグリ。

ガンガンガンッ!!

「うえーーーーーん!!」

グリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!

ガガガガガガガガガン!!

「くじけない強い子ですねぇ、先輩」

「あれだけ根性を出されると、止める気もなくなるよ…」

「「「「「お前等、先輩があんな酷い陵辱を受けているのに放置するとは何事だ!!」」」」」

「…自分だって普段からやってるくせに」

「「「「「俺は先輩の後輩だから良いんだ!」」」」」

「なんて無茶苦茶な理論…」

全員が同じ理論で、俺を止めに入る俺達。

実は奴ら、信じられないことに俺である。

5人の俺に羽交い絞めにされ、無理やり先輩の胸から引き離される俺。

「あ〜、俺のサンクチュアリが! 楽園が! 天界から無理やり追放される俺はまさにエンジェル! ぐっばい地球!! それでも僕は君の事を忘れたりはしない! そう、白い天使の羽は無くしたけれど、この頬にあの聖域の思い出は残っている!!」

「はふっ…人の身体的特徴で恥ずかしいナレーションをしないでください〜!」

グリグリが効いたのか。 やけに色っぽい声を出す先輩。

技の一号は伊達ではないのだ。

「「「「「こんにゃろー! お前だって俺の癖にひとりだけ美味しい目にあいやがってーー!!」」」」」

「なんだとぅ! こっちは一回多く殺されかけてんだよ! このぐらい役得があったって良いだろうが!」

「「「「やるかこのやろー!」」」」」

「上等だ! 今すぐ王位争奪戦でマッスルファイトしてやる!! 俺ゼブラな!!」

「「「「「ずるいぞ! ゼブラは俺んだ!」」」」」

「全員ゼブラ狙いかよ」

「先輩らしいチョイスですね」

ゼブラ役を巡って、俺達はおそまつ君のパンクシーンのごとく殴りあった。

「…太一が一人遊びをしている間に、状況を説明する」

「微妙にエロス入った言い回しですねー」

「太一の自慰は激しいのだな」

「直エロ禁止ー」

「せっかく一番うるさいのが黙ったんだから、あんた達も細かいボケは止めなさい」

なにやら隣でショートコントが始まっているが、今の俺には聞いている暇はない。

これで勝ったものにゼブラの称号が与えられるのだ。 シマウマ殺し放題になれるのだ。

じゅるり。

「支倉先輩が進行役をするなんて、珍しいですね…」

「…他に適任者がいない」

「みんなボケっぱなしだからな」

「お前が言うな」

「…私達が今いるこの世界をA、太一がいた世界をBとする」

「強引に進めることにしたのね」

「賢明でしょう…」 

「太一はB世界を観測することが出来、私達は同時に観測されたためにそこへ巻き込まれた…そして」

「その後は以下略で良いんじゃないですか?」

「詳しく説明すると解釈の所で揉めちゃいますしね」

「みみ先輩は、相変わらず電波飛ばしてますね」

先輩に対する敬いというものがまったくないな、ミキミキ。

誰に似たんだか…。

「じゃぁ以下略…。 太一は私達をA世界の住人として観測し、一人だけB世界に残った」

「しかも送り際で幾人かの貞操を奪ってですね」

喧嘩一時中断。

「「「「「「せっかく略したんだから言うな。 奪ってない人もいるだろ」」」」」」

ギロッ。

うわっ、冬子がめっちゃ睨んでる。

まぁ、一人だけ手を出されなかったしなぁ…。

ここはあれだ。

俺は他の5人を引き離して、冬子に近づいた。

良い感じにシャッフルされたし、俺が一号だとはバレまい。

「違うんだ冬子。 あれは決してお前を嫌っていたからじゃない」

「じゃぁ、何だって言うのよ!」

ガシッと肩に手を置いて、真剣な顔で。

…て、恥ずかしいなこれ。

「ん〜、なんていうか、前も言った気がするけど、俺はしゃんとした冬子が好きなんだ。 だから大切にしたかった」

女を酔わせるビューティーフェイスを作って煙に撒こうとしたのに、冬子の問い詰める眼差しを見ると、そんな演技をしていられなくなる。

本当に人間らしくなっちゃったね、俺。

嬉しいけどさ。

「だからわざと冷たくしちゃったけど、ごめんな」

割と本音で、冬子に謝罪する。

って、しまった。

こんなこと言ったら、また冬子が俺に依存してふにゃ○ん野郎になって、俺がガマンした甲斐が無くなるのでは。

「うぅ、そ、そんな言葉に騙されないんだから…!」

お、堪えた。

昔ならここで意地もプライドも溶けてフニャフニャだったのに…。

抵抗するとは生意気な!

…でもまぁ、冬子も成長したってことだよな。

我慢した甲斐あったのかもしんない。

自分が為したことに意味が出来た。

とても嬉しいことだ。

「そうやって頑張ってる冬子は、すごく好きだよ」

転んでも泣かなくなった娘を見守る父親の心境で、俺は冬子の頭を撫でた。

「太一…」

一瞬肩を震わせた冬子の体。

あ、やば。

頭頂部から伝わる、比喩的ではないぐんにゃりとした感触。

こういうのは本当に体の一部からでも伝わるものなのだ。

つまりこの感触が示すものとは。

「たいちぃ…」

がばっと、俺の腰をホールドする両手。

潤みつつ霞のかかった瞳。

上気した頬と、今時年齢一桁台の幼女でも浮かべないような無防備な微笑。

うわっ、完璧に溶けてるじゃん。

フニャフニャどころじゃなくてドロドロじゃん。

褒めて損したぞ!

「太一がいなくて、私ずっと寂しかった…」

俺の背中にのの字を書きつつ、冬子は語りだす。

「た、たっけてー! バカップル注意報が! バカップル注意報が発令されましたー! このままではデリート許可されてしまいます!」

「ジャッジメント」

「「「「「×」」」」」」

「デリート許可が出ましたが、今回は敢えて放置プレイです」

宇宙法廷の最高審判を無視して、美希がさらりと判決を変える。

「もう、周りなんてどうでも良いじゃない。 たぁいちってばぁ…」

「消してー! いっそのことデリートしてけれーー!!」

こちらのほうがよっぽど辛かった。

「支倉さん。 物欲しそうな顔してないで、ドンと話を進めちゃってください」

すっかり話が停滞してしまったので、みみ先輩が曜子ちゃんを急かす。

「太一は後で、私に同じことをすること」

「「「「「「命令かよ!」」」」」」

「しかも全裸で」

「「「「「「真っ裸かよ!」」」」」

「冴えてるようで冴えてないツッコミですねー」

「っていうか、勢いのみでごまかしてるって感じだな」

「ほらっ、霧ちんも乙女の性衝動が止まらないようなせつねー顔はやめなさい」

「そ、そんな顔なんてしてない、私!」

さすが我が愛奴隷。 気持ちを代弁してやるなら、もう見てるだけでネチョネチョのぐちゃぐちゃだわって感じだろうか。

でも言わない。 言えない。 この状態で言ったら、ゼロ距離で召還された冬子の愛刀に出現と同時に刺されるだろうから。

「「「「「もう見てるだけでネチョネチョのぐちゃぐちゃだわって感じか?」」」」」

その点自由な身の、その他俺は気軽なものだ。

くぅ! 自分とはいえ霧ちんが他の男に言葉攻めさせるなんて! 寝取られってこういう感じか! 嫌いだこの野郎!!

「バカ!」

霧ちん顔を赤くしながらの抗議。

そうだ、もっと言ってやるのだ!

やつらを罵り殺してやれ! …ラバなら案外楽に殺せそうだな。 なんというか、ずっと罵っていればいつの間にか昇天しそうだし。

奴も本望だろう。

「うぅ〜」

しかし、霧の様子がおかしい。 罵ってはいるが、視線が後ろの太一ズではなく、今謎の粘着生物に絡まれている俺こと一号なのである。

「なんでやねん」

覇気なくつっこんでみる。

人の心とは未だに奥深い。

「霧ち〜ん。 あんな孕ませマシーン先輩は放っておいて、私とインモラルで非生産的な遊びに興じませう〜」

と、こちらが人生の難題について頭を悩ませていると、なんと美希後輩が霧のなだらかな背中に取り付いて、そのなだらかな…もとい慎ましやかな乳房に手を添えたではないか。

「きゃんっ!」

霧ちんが乙女ポイント100点満点サービスつきの声を上げるとともに、胸に置いた指をわきわきと動かす。

「おーおー。 可愛い声出しやがって、このこのぉ」

「ん、んん! ちょっと美希!」

時に激しく時に繊細なタッチは、確実に霧の体を頂上へと押し上げる!

体は嫌がっていても心は錦!

俺がいない間に腕を上げたな美希。

「ういっす、光栄っす!」

「勝手に変なことを言わないでください!」

声に出してないと思ったのに返事をされた。

「「「「「おっと、その指使いは今は亡き三丁目の大田爺さんを思い起こさせる! エクセレントだ!!」」」」」

と思ったら、後ろの奴等がバッチリ声に出してやがった。

「抱かれぺけ君も、しっかり声に出してましたよー」

更に先輩から明かされる驚愕の事実。

っていうか俺の固体認識はそれですかお嬢さん。

「私ね。 子供は一人がいいなぁ。 名前はどうする? 私は太一が選んでくれるなら何でも…」

ハラキリ刀の出現を恐れた俺だが、幸いこちらのお嬢さんはトリップ状態で聞いちゃいないようだった。

「よし、女だったらガブスレイ。 男だったら桜庭浩にしよう」

「絶対却下。 特に後者」

ちょっと妄想に付き合ってやると、冬子の体に硬さが戻った。

まぁ俺も、後者だけは絶対にいやだなぁ。

「照れるなぁ」

「間違いなく照れる場所じゃないぞ、そこ」

「そうか。 がっくり」

「まぁ…それでいいんじゃないの?」

ラバは放っておいても、友貴が高確率でつっこんでくれるので安心だ。

このことに感謝して、俺がミドリ亀でも飼うことがあったら名前はDEATH友貴にしておいてやろう。

「ていうか、いい加減離れろ」

「あ…」

冬子を引っぺがして、素早く太一軍団の中に紛れる。

こちらが個体ではなく群体であれば、冬子も依存できまい。

「それより本当に説明聞かなくて良いんですか? 支倉さんがいじけちゃってますけど」

「「「「「「俺の所為じゃない。 悪いのはライダーマンだ」」」」」」

全員が俺こと一号の所為にしようとするが、それに乗ってボロを出すようなまねはしない。

こいつらがどう受け答えをするかなど、市原式潜入術改を使った俺にかかれば丸分かりだ。

どうしてもテクニシャンになりたいのかお前ら。

「あふっ、ちょ、ちょっと、いい加減離してぇ」

「や〜だ〜。 霧ちんがここだけで良い感じになってしまえるまで開発しちゃる〜」

「いや〜〜〜!」

…しかしあの様子を見ると、テクニシャンの座も危ういな。

「「「「「「って、あれ、曜子ちゃんは?」」」」」」

不覚にも美希のテクニックに見惚れてしまった。

これってもしかして、恋かしら。

そんな予感に胸をざわめかせながら、無駄に感知能力を活用して曜子ちゃんを探す。

…あ、いた。

彼女はわざわざ庭に出て、ガラス戸から顔を半分だけ出してこちらを見ていた。

元祖市原式潜入術だ。

その視線からは、確かにイジケオーラが漂う。

って言うかこれは、敢えて隠れることで気を引こうとしてるよな。

尽くすだけの女だった彼女が、そんな小芸まで覚えるようになるとは…。

「「「「「「キュンッ」」」」」」

「何でいきなり胸を押さえるんですか?」

お前も胸を押さえてるだろうが、もっとも他人の胸だが(米笑)。

「「「「「「スレた非処女子には見えない矢が刺さっているのだ。 コミック心眼を開眼させろ」」」」」

「その妖しげな単語は何でしょう?」

ある程度のコミック原子論を習得したものは、通常の感情表現では表せない現象に出くわした場合に、自らの精神を肥大化させることでコミックリアクション(comic−reaction)を行うことが出来る。

ただしこのコミックリアクションには欠点があり、同じくコミック原子論を利用したコミック心眼(comic−sineye)を用いなければ見ることが出来ないのだ。

しかし例外として、頭の中か耳元にミ・フェラリオ、もしくは四人ほどの妖精を宿らせれば、常にコミック心眼を開眼させ続けることが出来る。

日常生活には多少の支障が出るが、代償としては安いものだろう。

「うわぁ。 先輩のそのネタって咄嗟に出るんですか? それともノートブックにびっしり?」

「「「「「「どっちかっていうとびっしり派」」」」」」

「根っ暗〜!」

「「「「「「努力派とか良い感じの言葉に置き換えろよー!」」」」」」

「絶対いやでーす」

「み、美希! ほんとに手を離してくれないと、私…」

「ていうか、お前のボケは間違いなくアドリブのみだろ」

「太一は感覚で生きてるからな」

「「「「「「お前にだけは言われたくないわ」」」」」」

って、馬鹿な会話をしている間にまたもや曜子ちゃんがいなくなってる!

精神集中…!

気配発見!

場所移動!

「ここだぁ!」

ガラッ。

「…正解」

曜子ちゃんがいたのは、台所の戸棚の中だった。

「「「「「「なんだってこんな、変死体でも入りたがらない場所に」」」」」」

「太一は…私の話を聞く気がまるでない」

「「「「「「ちょっと待ってくれ。 大体さっきから話の腰を折ってるのは…」」」」」」

「うわっ、支倉先輩、なんでこんなゴッキーの巣窟っぽい場所に」

ハイヨーシルバーの如き体勢で霧を揉みつつ行進して来た美希だ。

ちなみに揉まれているほうは息も絶え絶えで、既に抵抗する力もない感じだ。

こいつだ、さっきから絶妙に進行の邪魔をしているのは。

「…ぬ」

「せ、先輩。 なんか美希、めちゃめちゃメンチ切られてますよ」

「曜子ちゃんも気付いたのだ。 真の黒幕の正体に」

「く、黒幕だなんてそんな…あはははは」

笑ってごまかしたと言うことは、図星な部分があるってことだよな。

そういえば、ループしてる間に美希の罠にかかって、曜子ちゃんが死んだ回があったそうな。

いくら偶然で間接的でも、曜子ちゃんが一般ピーポーの手にかかるとはなぁ。

調べればそんな回はもっとあったかもしれないし、相性というか、組み合わせ的に曜子ちゃんが不利に出来ているのかもしれない。

例えるなら、美希は電気系で曜子ちゃんは水系のポケ○ンといった感じか。

「いやぁ、殺される、殺される!!」

ちなみに異常に怖がってるのは、昔に原始的兵器で殺されかかった娘。

これで美希が霧ちんに弱いなら、素晴らしき三竦みも出来ようというものだが。

「き、霧ちん! お姉さんが抱いててあげるから頑張って!!」

「だからそっちの手も離してー!!」

お、マジ泣き入ってきた。

霧ちんも逃げるための犠牲に使われたり、直接殺されたりしてるらしいしなぁ。

美希最強説浮上?

「「「「「「ともかく、話が一向に進まないし戻ろう」」」」」」

俺全員で手を差し出し、曜子ちゃんを戸棚からニュルリと出す。

…呪いのビデオの中の人みたいだ。

そのまま全員で手を繋いで連行。

「どうせならお姫様だっこ…」

「この人数なら胴上げも出来ちゃいそうだけど却下」

大体そんなことする間もなく、すぐ戻ってこれちゃったし。

冬子に睨まれてるもん。

熱も冷めて、フニャフニャもそれなりに解除されたらしい。

嫉妬に狂ってとんでもないことをされる前に曜子ちゃんの手をテイクオフ。

「太一… 本当に説明が必要?」

改めて問われる。

曜子ちゃんもひそかに傷ついているらしい。

いや、まぁ説明が必要かと言われれば、どうなのだろう。

集まってる全員は状況を把握している訳だし、大事なのは過去より未来だぜブラザー。

「「「「「「………」」」」」」

「そこは物語の都合ってものですから、素直に従うのが吉ってもんですよ」

と、妙な助言をしたのはみみ先輩。

先輩、帰って来る前にどこぞの裏世界を覗いてしまったんじゃないかしらん。

まぁ、ごちゃごちゃしてるし、話の整理はしたほうが良いよな。

うん、うん。 強引なんかじゃないぞ。

「せ、せんぱーい!」

「「「「「「と、人が決意した瞬間にそれか! このスカ=ポンタン!!」」」」」」

弱弱しい美希の声で、またも流れがぶっ千切れる。

流れクラッシャー美希の称号与えるぞこんちきしょう。

「何でそんな変な区切り方するんですか」

「「「「「「流行の擬人化だ。 しかも微妙にエロい響きを持っているというナイスさ」」」」」」

「と、そんなことはどうでも良いのです! それより霧ちんが倒れました!!」

聞いといてどうでも良いとは悪魔の所業DA悪魔っ子! デビル美希は地獄美希!

しかも俺、今時分で自分のギャグを解説してしまった…。

って、倒れた?

見ると、美希の腕の中で霧ちんがぐったりしていた。

頬がめっちゃ上気してる。

あー…これは。

プロフィール上童貞だが、それはファンのイメージを壊さない為の方便です愛貴族、黒須太一が断言しよう。

「「「「「「…揉み過ぎだって」」」」」」

「え? ていうことは、霧ちんは…」

「お逝きになりました」

耳を澄ませば、聞こえる聞こえる霧のすすり泣き。

内容は、私汚れたとかもうお日様の下を歩けないとか。

潔癖症さんめ。

ムラムラきちゃうじゃないか。

「うわぁ…美希こんなの見るのもしたのも初めてですよ」

後ろの童貞どもに霧ちんの痴態を見られるのも癪なので、6人の俺を用意て、しっかり視線をガード。

もっともこのピュアチェリーズども、片一方はしっかり青春して、目を天井やら庭やらに漂わせ、片一方はまったく興味を示していないという腑抜けぶりだが。

「「「「「「日常茶飯事じゃなかったのか」」」」」」

それはともかく、隠すという行動をしながらも、俺は敢えて禁断の領域に触れてみるというアンビバレンツ的質問をしてみた。

「やだなぁ。 美希と霧ちんはプラトニックであって、お花さんと呼ばれども百のつく花的な関係ではないのですよ」

「「「「「「まぁ、それもこの瞬間に、ばっちり壊れてしまったのだけれども」」」」」」

「き、霧ちん。 私達の友情は永遠だよね!」

現実を突きつけてみると、美希は慌てて霧の肩を掴んで揺さぶる。

口から出るのは素晴らしい偽善ワード集(全36巻)の第一行目に乗せられているかのような素晴らしい偽善ワード。

「うぅ…私尼になる…」

しばらく会わないうちに面白いことを言うようになったね霧ちん。

しかし、だったらこの霧の脆さは天性のものなのか。

さすが我が愛奴隷。

でもそれじゃぁ霧は、既にフル改造ボーナスつきってことで、新たな愛の発掘作業が出来ないのでは…。

うわぉ、ポテンシャルが高すぎるって逆に悲劇なのね。

ガン○ム乗りって基本的に不幸だしなぁ…。

話を元に戻そう。

「「「「「「…とりあえず、曜子ちゃんの家に行こうか」」」」」」

「何でですか?」

「きまぐれ?」

いや、理由はちゃんとあるんだけど。

「太一、性欲の処理なら別にここでも…」

「「「「「「確かにムラムラは順調に溜まってるけど、そうではなくて」」」」」」

曜子ちゃんが大胆な申し出をしてくれるが、とりあえず却下。

欲情された霧が咄嗟に警戒ポーズをとるが、さっき、あんな痴態を晒した上に、私は貴方の愛ご主人様ですよ?

まぁ、今は増えてるけどね。

再教育してやりたいが我慢しよう。

「あ、霧ちんに新しい下穿きを用意してあげる訳ですね」

「うっ…」

今度はお顔が真っ赤ですよ霧ちん。

もじもじしちゃってますよ、手がスカートを押さえちゃってますよ。

しかも異議を唱えないってことは、つまりアレがナニってことで良いんじゃないですかい。

「い、いやらしい目で見ないでっ!」

おーおー、生意気に拒絶しやがる。

ちょっぴり冷戦時代を思い出すけど、僕の脳内にはあのちょっと引くぐらい従順だったあの日の君が記録されてるから平気さ。

キラリンッ!

「罵られたのに親指立てて歯ぁ光らせてるー…」

「変態…」

「太一、ちょっと幻滅」

「…ばーか」

「それはさすがにちょっと…」

「「「「「「うわぁぁぁん! 我が無二の親友よー! 女子達が苛めるよー!!」」」」」」

悔しいので、6人全員で友貴にすがってみる。

「ぼ、僕に泣きつくな! 同類だと思われたら明日から表を歩けなくなるだろ!」

「親友。 俺の胸ならいつでも貸すぞ」

「「「「「「うわぁぁぁん! 唯一無二の親友にも拒絶されたー!!」」」」」」」

完全に桜庭は無視。

「せつないぜ」

話も進まないので、ケロッと泣くのを止めてみる。

「「「「「「まぁ、霧ちんのランジェリーも考慮には入れるけど、それも違う」」」」」」

霧は蒸し返されて赤くなる。

しかし言い返せない。

勝った。

ていうか曜子ちゃんの下着は、常に真剣勝負なラインナップしかないからなぁ。

霧が見たら卒倒しちゃうかも。

「先輩。 そんなことばっかりしてるから霧ちんの警戒度が上がっていくんですよ」

「嘘泣きまでするし」

う、それはヤバいなぁ。

よし、曜子邸で思いっきりゴージャスティスな下着を霧ちんに上げて、警戒心を下げつつ好感度もMAXだ!

ちなみに後ろだけ穴が開いてるような素晴らしいギミックも搭載しておこう。

…いや、でもアレはじっさいに穿いてこられると引いたよなぁ。

「貞操帯のことですか?」

「「「「「「いや、それとは別で、内容はむしろ美希が穿いていたような…」」」」」」

「ばちこーん!」

BATIKOOOOON!!

突如として美希の張り手が飛んできて、俺こと一号はコミック力場の相乗効果もあいまって派手に飛んだ。

「やだなぁ先輩。 美希は清純派ですから、そんなの穿きませんよー。 悪質なデマは止めてくださいな」

「だ、だったら何故殴る…」

「なんとなく。 強烈な本能の訴えによって」

「バリバリ現代っ子の癖に、そんなときばかり本能を主張するな」

いや、美希がそんなの穿いてたなんて記憶は確かに俺にはないんだけど、でもなぜかそんな台詞と前も後ろも穴が開いたような破廉恥な下着が頭をよぎった訳で。

というか今絶対思考を読まれた気もするし。

プライバシーの侵害だ。

「だから、口に出してるのよ」

「…しかも暴露されたのは私のプライバシー」

俺は誰が穿いてきたなんていうのは言ってな…むしろ考えてないからそこはセーフでしょ。

過去の映像が、漫画の吹き出しのごとく頭上に出てたなんていったら、もう終わりだけど。

「それにしても、何で俺ばっかり殴られたり殺されかけたりするんだ…」

「一番前のぺけくんは、前世で何か悪事でも働いたとか」

「全員同じ人間ですってば」

っていうか、一番前にいるのがいけないんだ。

ポジション替えしてぇ〜…。

「で、だからなんで場所を移すんだよ」

俺壁の後ろから友貴。

…そうか、こいつ知らないんだっけ。

「「「「「「曜子ちゃんの家には、アレがあるから」」」」」」

俺が言うと、女子達がみんな「あぁアレね」と納得の表情を浮かべた。

こんなに大勢とツーカーの中になれるとは、俺も嬉しい限りだ。

「「「「「「ふっふっふ、知らないのはお前だけのようだな」」」」」」

「いや、何でラバまで納得した表情してるんだよ! こいつだって絶対知らないだろ」

「雰囲気に合わせてみた」

「「「「「「普段は空気読まないくせに」」」」」」

ツッコミを入れるが、ラバは何のことだかと首をひねりやがった。

はぁ、こいつの相手をしててもしょうがないな。

…とにかく、話は曜子邸へと続くのであった、と。


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